「ブックトーク」とは、テーマを決めて絵本や本を紹介する催しです。
この記事では、初めてブックトークをする人向けに、テーマの決め方やどんな本を選んだらいいのか、本を紹介するときのシナリオの作り方などを、私が日頃やっている手順や実例をもとに解説していきます。
「ブックトーク」とは
ブックトークは、読み聞かせとは違い、絵本や本の一部を見せたり読み上げたりしつつ、その本の魅力を伝えていくもの。
多くは図書館、学校、書店などで開催されます。
季節や行事、紹介したい人たちの年代、その他いろいろなテーマに沿って、3冊~十数冊の本をセレクトし、シナリオに沿ってテンポよく紹介していきます。
ネットでいうと→「キュレーション」
ファッション業界なら→「セレクトショップ」
のような役割です。
誰かがセレクトしてくれることで、それまで出会えなかった本との出会いのきっかけになりますよね。
対象は子どもから大人までOKですが、あまり小さい子には不向きで、大人と一緒でなくても本を読んだり選んだりできる小学生以上が目安です。
ブックトークの所要時間は、対象者の年齢や主催場所の都合によって変わりますが、子どもであれば長くても30分、大人でも1時間以内が適当ではないでしょうか。
長すぎると集中力が途切れてしまいますし、短すぎると本の魅力が伝えきれず、消化不良になってしまいます。
1冊あたりの解説時間を大きく変えることは難しいので、冊数で調整するのがいいですね。
「ブックトーク」テーマの決め方・選び方
ブックトークでは漫然と「これが面白いですよ」「これもおすすめですよ」と紹介していくのではなく、必ずテーマが存在します。
(誰がそう決めたのかは私もわからない…ブックトーク=Booktalk は英語なので、アメリカかイギリスだとは思うのですが…今調べてますので、また分かったら書きますね!)
この「テーマ」を何にするかが、ブックトークの準備の最大のポイントといえます。
テーマの決め方には、大きく分けて二通りあります。
- メインとなる本が1冊あって、それを核にして関連する内容の本を選んでいく方法
- 季節や行事、身の回りのできごとなどに合わせ「七夕」「虹」「けんか」などのテーマを設定し本を選んでいく方法
そのほか、小学校や中学校では、「青虫」とか「戦争」など授業や学習に合わせたテーマが求められ、先生や学校司書さんや図書ボランティアのお母さんがそれに合わせてブックトークを考える…というパターンもあります。
「ブックトーク」テーマに合った本の選び方
例えば、”9月はお月見の季節だし、「月」をテーマにしよう!”と考えたとすれば、月が登場する絵本や民話、月にまつわる物語や小説などを、対象年齢に合わせて選んでいきます。
司書や書店員さんなど本の知識が豊富な人は頭で覚えている本をピックアップしてもいいですが、私はそこまで覚えてはいないので、インターネットや図書館で「月」「つき」というキーワードで検索して、気になる本をどんどんメモしていきます。
でも本は中身を見ないと判断できないのでそのまま紹介することは絶対になく、図書館で借りられるものは借り、インターネットで情報が公開されている本については分かる限りチェックして内容を把握します。
ピックアップした本がぜんぶ紹介できることはまれで、たいていは「ちょっと流れに合わない」「思ってたのと違う」という理由で何冊も候補から外されます。
持ち時間に対して冊数が多すぎる時は、同系統の本(テーマで集めてみると、これが意外にあるんですよ)を1冊省いたり、中身まで紹介する本とさらっと触れて参考にしてもらうだけの本に分けたり…という選定を行っていきます。
この時は、自分のフィーリングも大事にして下さいね。
「個人的好みでいいの?」と思われるかもしれませんが、自分が納得できないままだと、なぜか聞き手にしっかり伝わってしまうんですよ。
「ブックトーク」シナリオの書き方例
本が決まったら、どんな流れで紹介していくかを考えます。
この、紹介する順番や本と本とのつなぎ方をまとめたものを「シナリオ」といいます。
私はパソコンでシナリオを作りますが、もちろんノートなどに手書きでもOK。
ただ、手書きの場合、本の紹介順はきっと「ああでもないこうでもない」と入れ替えることが予想されますので、大きめのふせんなどに書いて、自由に貼りなおせるようにするのをおすすめします。
私はパソコンで、Google Docmentを使って作成、オンラインで保存しておきます。
本番では、印刷したものやタブレットやスマホでシナリオを見ながら進めることも可能なので便利ですよ。
実際のシナリオ例は、以下のページで紹介していますので読んでみて下さいね!
(Coming soon)
また、以下の書籍もテーマ選びやシナリオ作りの参考になります。
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↑ 厚さ1センチもない小型で薄い本ですが、内容は濃く、日本の児童文学の第一人者の1人である松岡享子さんの解説で始まり、実際のブックトーク例(シナリオ)も質が高いです。
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↑「集団」「個人」などの対象ごとに、実際に何ページを開いてみせてどんなことを話すかという完成したシナリオがたくさん紹介されているので、ブックトークなんてやったことがないけど、事情でどうしてもやらなければいけない…という人もこれ1冊あれば実現可能です。
本の冒頭部分に書かれているブックトークの基本やコツも参考になります。
「家族」などの広いテーマは、一工夫して”あなたは何人家族?”などとすると子どもたちの反応がよくなる
放っておいても子どもたちが手にとる本ではなく、目立たないけれど読めばおもしろい本こそ紹介しよう
「あらすじ」の紹介は、その先を知りたい!というポイントまで が目安
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小さい子が動画コンテンツを見るのが当たり前のようになった今日この頃でも、やっぱり読み聞かせはみんな大好きで、園や学校に読み聞かせに行くと、目をキラキラさせて聞いてくれます。
でも、1人で本を読むのはなかなかハードルが高いのか、進んで読む子とそうでない子の差が大きいです。
そこで、中身に興味を持ち、自然に本を手に取りたくなるよう、ブックトークで魅力を紹介していきましょう…という趣旨の本がこちらです。(基本的にブックトークはすべてそうですが)
詳しいシナリオに加え、子どもたちの反応も載っています。
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↑シナリオの紹介(後半)はシンプルですが、実際にブックトークに関わった人たちの手記がたくさん載っていて読みごたえがあります。
ああ、こういうふうに進めるとこんな落とし穴があるんだ…とかね。
すでにブックトークをやっている人に特におすすめの1冊です。
↑京都にある絵本・児童書専門の書店「きんだあらんど」さんをベースにブックトークをしている方たちの実際のシナリオを収録したもの。
大人向けのシナリオもあって参考になります。
私も一度、子どもが幼稚園の頃に聞く側としてきんだあらんどさんのブックトークに参加したことがあり、その時に紹介してもらった本がすごく素敵で、その日はまんまと1冊買って帰りました(笑)
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↑今でも、夏休み前、一学期の最後の読み聞かせに持っていくとすごくいい感じです。
*
なお、上記の本にはたくさんシナリオが載っていますが、どうしても時間がない時以外はそれをそのまま演じるのではなく、必ずあなた自身が「その本を読んで感じたこと」「ぜひ伝えたいこと」をブックトークのベースにして下さいね。
その上で、本に紹介されているブックトークをそのまま1人で真似してみると、時間配分や次の本に移る時の言い回しなど、参考になることが山のようにあると思います。
「ブックトーク」の具体的な進め方
ブックトーク本番は、以下のような手順で進めていきます。
- あいさつやブックトークの主旨を説明します。
- 1冊ごとに、どんな本か、どこが魅力かを話します。「続きを読んでみたいな」「もう1回手に取って読みたいな」と思ってもらえるのがベスト。
- 前の本とつながるように、次の本を紹介していきます。
- 紹介した本は、横に広いテーブルや長机を用意し、表紙がよく見えるように開いて立てておきます。
- 最後に質問などを受け付けます。みんなの前で手をあげる人は少ないので、「あとで個別にでもどうぞ」と案内するといいですね。
私流「ブックトーク」を楽しんでもらえるコツ
私はここ数年、おもに幼稚園や未就園児クラスのお母さん向けのブックトークで幼稚園を回らせてもらい、おすすめの絵本を紹介したり、絵本の選び方をお話したりしています。
児童生徒や大人向けのブックトークと大きく違うところは、小さいお子さんが一緒ということ。
私は毎回、自己紹介や説明より前、最初に絵本を1冊読み聞かせすることにしています。
なんというか、言葉よりこっち(読み聞かせ)の方が、今日来た私はどんな人なのか、ずっと伝わりやすい気がします。
そして、うまくお子さんたちが絵本の世界に入り込んでくれると、それまでガヤガヤしていても、すっと無音になる瞬間があるんですよね。
そのあとで初めて自己紹介と「これから絵本を紹介していきますね」という話をすると、小さい子でもよく理解してくれます。
もちろん読み聞かせじゃないんだと分かるとすぐ逃げていく子もいるし、反対にママから離れられない子もいます。
私も子どもたちが小さい頃、お利口にできない・または離れていられないことで恥ずかしく思ったり恐縮したり叱ったり…よくしていました。
でも、小さい子を連れたママは、ただでさえ日頃あちこちで肩身の狭い思いをしているのだから、今は自由に楽しんでほしい。
そんな思いから、
「お子さんはママのおひざでも、向こうで遊んできても、どちらでもいいですよ」
と私はいつもお伝えしてます。
また、私は読み聞かせの最後にも、楽しい絵本を1冊読んで終わるようにしています。
最初と最後に読む絵本は、テーマに合わせることもあれば、最初は子どもたちが思わず引き込まれるようなもの・最後はハッピーな気持ちになれるもの…などを重視して選ぶこともあります。
「ブックトーク」絵本の紹介や読み聞かせの著作権はどうなる?
ブックトークで紹介する絵本は、出版社などに許可を取らなくても良いのか?と心配な方もいらっしゃるかと思います。
以下は、「日本書籍出版協会」が発表しているガイドラインの一部です。
●営利を目的とせず、かつ観客から料金を受けず、かつ実演・口述する人
(児童書を朗読する人)に報酬が支払われない場合に限り無許諾で利用で
きる。
★なお、本手引きにおいては、実演・口述する人への交通費等の支払い、
ボランティアの交通費・昼食代および資料費、会場費等のお話会の開催
にかかわる経費に充当するために観客から料金を受ける場合は、無許諾
で利用できることとします。
同じく福音館のガイドラインはこちらから確認できます。
要するに、本来はすべて許可が必要ですが、ボランティアの読み聞かせやキッズスペースなどでのお話会に関しては、いちいち許可を取るのが大変なこと、内容を見聞きする人数が限定的なことなどから、特例として免除されているということですね。
私も、ブックトークでは交通費と書籍購入・資料印刷代などの経費だけをいただいており、チケット販売やギャラの支払いは発生していないので、特に出版社へ許可は取っていません。
ただし、原本をコピーして上映する・人形劇にアレンジする…といった場合は、別途許可が必要または禁止されています。
もとの本のサイズに合わせて絵が描かれていることもあるので、拡大コピーだけでもおやめください(世界観が変わるため)という出版社も。「大型本」が出ていることがあるので、図書館で探してみるといいでしょう。
(↑著作権の保護期間が切れているもの、著作者が独占を放棄しているもの、許可を取ったものなどは除きます)
おわりに
今から10年以上前に、近所の図書館で「ブックトーク入門」という3か月連続の講座があり、興味があったので参加してみたのが私とブックトークのご縁のはじまりでした。
担当の講師の方がほめ上手で、「あなたはすぐにでもできるわね」と言っていただき調子に乗った私は、娘の通っていた幼稚園の先生にポロっとその話をしたところ、
「バブルスさん…!ぜひうちの未就園児クラスでやってください(ハート&圧)!!」
と。
私がですか??!!
と恐縮しつつ、がんばってテーマを考え、シナリオを作り、一生懸命やってみました!
会場のセッティングなど最初は試行錯誤のことも多く、お子さんたちがにぎやかでお母さん3人くらいにしか聞こえてなかったかも…という回もありましたが、その後工夫を重ね、最近は本当に毎回いい時間が過ごせていただけている気がします。(自分で言っておく・笑)
こういう、お母さん向けのブックトークはちょっと珍しいかもしれませんが、もっと広まるといいなと思っています。
また、児童生徒や大人向けのブックトークも、今回の記事でご紹介したのと基本的な考え方や進め方は変わらないので、ぜひ参考にして下さいね。
参考:
山梨県立図書館「ブックトーク実践のコツ&本の選び方」
https://www.lib.pref.yamanashi.jp/jitugigaido%20booktalk.pdf