話題の本を図書館で予約すると、100人待ちで回ってくるのは半年後…みたいなことはザラ。
さっさと新刊購入して、読んだらメルカリで売る方が早いよねと思いつつ、とりあえず誰かがおすすめしてくれたら図書館に予約を入れてます。
この本『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した (ジェームズ・ブラッドワース著)』もそのうちの1冊で、結局7ヶ月くらい待ったかな?
今さら感ありありですが、やっと読みました!
『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』はどんな本?
この本はノンフィクションのルポで、英国に住むジャーナリストの著者が、身分を隠して最低賃金に属する仕事の現場に潜入し、自分がいち労働者としてどのような待遇を受けたのかを記録したものです。
周りの人たちの生い立ちや働き方、どんな生活をしているのか…などもインタビューしていて、巨大倉庫での厳しい労働環境や、声なき移民労働者の苦しい生活、「グローバル化」という名の貧富の差と搾取構造などを、実体験ならではのリアルさで描いています。
「Amazonで絶望・ウーバーで発狂」タイトルの意味は?
この本は原題は『HIRED』。「雇われる」という意味です。
日本語版のタイトルは「絶望」「発狂」とかなり刺激的ですが、どうしてこうなっているのか?と考えてみました。
Amazonの倉庫で起きていること
Amazon、もちろん私もめっちゃお世話になっています。
でも、すごい速さで手元に届く商品は、毎日夕方には足が動かなくなり、トイレに行く暇もないほどの重労働&低賃金で誰かが用意してくれているのかと思うととても複雑な気分になりました。(日本とイギリスでは若干違うのかもしれませんが…。)
Uber (ウーバー)の運転手は本当に自由なのか
また私は特に、後半、ウーバーのドライバーや自転車便などの「ギグ・エコノミー」の実態ルポが気になっていました。
なぜかというと、私のような「ライター」もまさに、”ネットなどを通じて依頼があった時に単発でその仕事を請け負う”という、ギグ・エコノミー労働者の一員だからです。
ただ、著者が実際にウーバーの運転手として働いたルポを読むと、私のイメージするそれとはかなり違う…と思いました。
私の働き方は、いろいろな企業や個人の方からライティングの相談をいただいて、内容や納期・価格を決め、お仕事が終われば報酬を受け取る形です。
プレスリリースなど単発のお仕事からWEBサイトの記事作成など長期継続まで期間はいろいろですが、まあこれは本来のギグ・エコノミーと言っていいと思います。
しかし、英国ウーバーのドライバーはそうではなくて。
「自分の働きたい時間に、働きたいぶんだけ、自由に仕事が選べる」
とうたいつつ、実際は振られた仕事を断ったり変な乗客に低評価をつけられたりするとペナルティが存在し、限りなく「雇用」に近い状態。
なのに、雇用であれば本来会社が用意すべき車や、ガソリン代などの経費、保険や有給休暇などは保証されません。
あくまでも「個人事業主」だから自己負担とされるんです。
絶望して発狂するのは外国の誰かではなく、明日の自分かもしれない
この本に登場するような名もなき労働者たちの声を、今は聞こえてこないからといって無視し続けた先にあるのは、いざ自分がそうなったときの”絶望”と”発狂”。
だから、今のうちにみんな見てくれ、放っておいてはいけない…という著者の叫びが伝わってくる1冊です。
AmazonやUber EATSユーザーの人、イギリス旅行が好きな人はぜひ読んでみて。